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誰でも気軽に利用できるようになった半面、匿名をいいことに、ネット上には度を越した誹謗(ひぼう)中傷の書き込みも氾濫(はんらん)している。今回の判決によって、ネット利用者や関係者には便利さにふさわしい責任とモラルが一層、問われる。 上告していたのは、自分のホームページ上でラーメンチェーン店を中傷したとして名誉棄損罪に問われた会社員だ。「ネットは反論が容易」などとして、罪の成立は新聞や雑誌とは異なる基準で判断すべきだと訴えていた。 1審の東京地裁判決はネットの個人利用者に限って名誉棄損の基準を緩めることが可能として無罪としたが、2審の東京高裁は「ネットの表現行為は今後も拡大し、信頼度向上がますます要請される」と、逆転有罪とした。 ネットの有用性は指摘するまでもないが、他人を中傷する行為は「表現の自由」をはき違えた悪質な犯罪である。不特定多数が瞬時に閲覧する点でも被害は深刻で、中高校生が自殺に追い込まれるケースすら起きている。 法務省の調べでは、平成20年のネット利用による人権侵害事件は前年比で23%増加した。こうした現実を踏まえても、最高裁判断は当然といえる。 被害の救済には、悪質な行為を取り締まることが必要だ。発信元は掲示板のアドレスなどから探り出すことができる。被害者からの訴えを積極的に吸い上げ、迅速に対応すべきだ。 ネットの接続業者や、掲示板の管理人に課せられた責任も重大だ。14年に「プロバイダー責任法」が施行され、被害者らが管理人に、書き込み内容の削除や誰が書き込んだかの情報開示を求めることが可能になった。
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